何を話せば

Category : Diary
仕事が忙しくなってくると事務所に顔を出すことはほとんどなくなる。
今日も某役所に直接向かった。

導入しているシステムの内容にもよるけど稼動前はほぼ毎日といっていいほど客先に顔を出すのに、いざ稼動してしまえば(安定稼動している限り)あとは電話やメールでのやり取りで済んでしまうため、現地に赴くことはほとんどなくなる。

ここのお客さんと会うのはかなり久しぶりのことなので、少し緊張していた。一応、役所も会社もクールビズを励行しているのだけど、気合を入れるために敢えてネクタイを締めていった。

『すいません、○○さんいらっしゃいますか。』

僕は一番近くの職員に向かって声をかけた。

『あっ、わざわざおいでいただいてありがとうございます。』

僕が探そうとしていた人はすぐ近くにいた。

愕然とした。

以前の姿からは全く想像も出来ない人相になっていたからだ。

僕としたことが感情を表情に出してしまったかもしれない。

以前は横綱のような体型をしていたのに…『スリムになった』なんてもんじゃない。
激ヤセとは正にこのことだろう。
以前はパンパンに膨れ上がっていたスラックスやYシャツも今ではどこか持て余しているような印象を受ける。

彼は昨年の冬あたりから精神的なものからくる病気で職場を休んでいた。
相当ハードな生活を強いられてきたことは想像に難くない。

人相が激変したとはいえ当人が近くにいながら気づかなかった僕は恥ずかしくなって、すぐに仕事の話題を振った。

『どうも・・・本当にお久しぶりです。会場の準備がありますから早速研修会場に向かいましょうか。』

僕は研修会のサポートを頼まれていた。内容は各学校の校長先生達にシステムの操作方法を説明するというものだ。
遊びの分野で人前に立つのは好きだけど、こういうのはめっぽう苦手。

僕のような末端の人間はパソコンに黙々と向かって仕事をするものだと思っていたけど、ウチの会社は全くそうではなかった。
お客さんとはよく会話をしなきゃならないし、場合によっては今日のようなシチュエーションも有り得る。

まぁ僕のことはどうでもよくて、問題は激変した彼(お客さん)だ。
一体何を話せばいいのか。

『久しぶりにお会いしましたけど、だいぶスリムになりましたね(^-^)』

なんてしらじらしい会話をした方がいいのか。

きっと彼は色々な人から同様のことを言われて、その度に同じような回答をしてきたことだろう。それに、スリムというよりも不健康な痩せ方をしているのは誰の目から見ても明らかだ。

自分では何の気なしに発言したことでも受け取る側からすると深く傷つくこともあるのだ。『ひょっとしてこういうこと言うとマズイかな?』と思いながら発言してしまったときは大抵悪い結果になるのが分かっていたから僕は敢えて沈黙を選んだ。

僕は移動中無言でも全く気にならないタイプなのだけど、彼の方が気まずくなったのかエレベーターの中でこう言った。

『私、未だにエレベーターが苦手なんですよ。』

RIS-O:『密閉されている空間が苦手ということですか?』

『うーん、というかすぐに救急車を呼べない場所にいること自体が不安なんですよ。』

RIS-O:『あぁ・・・そうなんですか。私は最近までお客さんの状態を知らなかったもので・・・それは大変ですよね。』

こういうとき何といっていいのか分からない。

本人からすれば病気に成りたくて成ったわけじゃないのだろうが、自分はこういう風にだけはなりたくないと思う。仕事だけではなく日常生活まで支障をきたすようになってしまっては人生何を楽しみに生きていくのか分からなくなってしまいそうだからだ。

その後、ウチの関連会社の営業(←初対面)も合流し研修会場の準備はあっという間に終わった。

研修開始1時間以上前だというのに、かなり早めに訪れる校長先生もいて彼と話していた。

校長:『まぁ、○○さん! だいぶスリムになられましたね(^^』

・・・フツーに話してるし。

彼:『突然お休みモードに入ってしまって…ご迷惑おかけしました。実家に戻っていたのですが、実家の料理と規則正しい生活をしていたらいつの間にか体型が変わっていました。』

本当にそうなんだろうか?
僕にはどう見てもそういう風には見えなかった。

彼:『心臓がバクバク言って、息が吸えなくなるんですよ。病院で診てもらったら”明日から仕事を休みなさい”と言われて、そのまま来れなくなっちゃったんです。』

あぁ、やはりハードな日々を過ごしてきたのか。
動悸が激しくなって息が吸えなくなる感覚とは一体どういうものなのだろうか。
浴槽に顔をうずめられているような恐怖感を味わうのか。
いずれにせよ恐ろしいことだ。

いつまでも立ち聞きするのも悪い気がして、僕は営業に『ちょっとジュースを飲んできます。』と言ってその場を去った。自動販売機の前で財布から小銭を取り出そうとしたが、結局千円札を取り出してペットボトルのお茶を3つほど購入した。
そして研修会場に戻った僕は彼(お客さん)と営業に『よかったらどうぞ』と言ってペットボトルを渡した。
こういうのは営業の役目なのだろうか?
営業はかなり驚いていて『あっ、私、お金払いますから!』なんて言って財布を取り出そうとしたけど・・・ここでお金を受け取っていては何も意味もない。
彼の方は『あぁ、気を遣っていただいて本当にありがとうございます。』と礼を言った。
こんなもので人間関係が円滑になるのなら安い投資だ。

しかし、社会人が板についてくると自然と気を遣うことができるもんだな。なんて自分で思ってみたり。単なるオタクだった学生時代の僕には絶対に思い浮かばない発想だっただろう。

研修会の講師は(パート別に)彼と僕で交互にやることになっていた。
僕は(校長先生方も)彼がぶっ倒れるんじゃないかと気が気でならなかったが、研修会は無事に終了した。

彼は校長先生方に向かって『長い間休職してご迷惑をおかけしました。未だに仕事はソコソコで、ぐうたら職員を続けさせていただいていますが・・・』などと卑下して自分のことを話していた。

世の中にはあれこれ理由をつけて働かない人も多いというのに、復帰しただけ偉いと思う。

結局彼とは仕事に関する話をしただけで、久々の対面であるにも関わらず雑談らしい雑談はほとんどしなかった。
やはり僕は冷たい人間なのだろうか。
Posted by りすお [RIS-O] on 23.2007   0 trackback
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